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2012年5月

2012年5月29日 (火)

赤ちゃんと脳科学/小西 行郎

「赤ちゃんと脳科学」も「赤ちゃんの不思議」と同じく
難解な専門用語が抑えられた平易な言葉で書かれていて難なく読める本です。

こちらは本のタイトル通り脳科学に重点を置いた研究内容の紹介となっています。
最新の脳科学や発達学の見地から赤ちゃんは生まれる前から、
刺激に対して応答し学習するだけの受動的な存在ではなく、
能動的に周囲の環境に働きかける、優れた認知能力を持っている存在であることが明かされます。

早期からの自然な発達を無視した過剰な刺激(教育)を一方的に与えることは脳にとって不自然な負荷を与えることになり、
その結果脳の発育に障害をもたらす可能性を示唆しています。

赤ちゃんは親や周囲の人たちと相互的なコミュニケーションを取ることで
正常な脳の発育を促すことができるといいます。
このへんの解説はやや科学的な結論というより著者の知見によるものが大きいですが、
脳科学や発達学の研究成果を論拠に、似非的な育児論に惑わされない、
幸福な育児を行うための姿勢が語られています。

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2012年5月26日 (土)

赤ちゃんの不思議/開 一夫

「赤ちゃんの不思議」は近年の赤ちゃんの研究とその成果を紹介した本です。
本書で紹介されている研究は大まかにいって、
注視時間法などの従来の手法による研究と、
近頃のトレンドになっている脳科学からのアプローチによる研究となっています。

「赤ちゃん学」が盛んになってまだ日が浅く、その手法は十分に確立されていない、
このことを正直に述べた上で、著者の偏った持論に陥ることなく中庸的な立場で様々な研究が紹介されています。
赤ちゃんの研究が進むにあたり、
ピアジェ以降作られた赤ちゃんのイメージである外部からの刺激に反応するばかりの無力な赤ちゃん像から、
赤ちゃん自ら能動的に外部の環境に働きかる存在であるとイメージ像が転換していることがわかります。

個人的には赤ちゃんは生まれて間もない時期でも利他的行動を好む傾向があるという研究が印象的でした。

「赤ちゃん学」は未だに未成熟で(科学が一般的にそうであるように)現在見いだされた成果は、
今後の研究により覆られる可能性についても言及されています。
赤ちゃんの発達については解明されていないことが多くあるのにもかかわらず、
一部の研究の成果がマスメディアなどにより拡大解釈され、歪曲された形で流布されることがあり、
これらの情報を鵜呑みにする危険性について警告しています。
たとえば、早期教育の必要性を説くために臨界期(ある認知機能を獲得できる期間)という言葉がありますが、
臨界期はそもそも刺激を遮断した場合に失われる機能に対して見いだされた成果であり、
早期から過剰な刺激を与えた場合に、人間の発達としてどのような影響を与えるのかということは
まだ十分な研究がされていないと作者は伝えています。
学者として研究の成果を一般の人に誤解なく伝えたいという真摯な姿勢が好感が持てます。

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